適正価格 と 私たち の 食卓
「フェアトレード」という言葉をご存知ですか?
日本では途上国で生産された日用品や食料品が、驚くほど安い価格で販売されていることがあります。一方生産国ではその安さを生み出すため、正当な対価が生産者に支払われなかったり、生産性を上げるために必要以上の農薬が使用され環境が破壊されたり、生産する人の健康に害を及ぼしたりといった事態が起こっています。生産者が美味しくて品質の良いものを作り続けていくためには、生産者の労働環境や生活水準が保証され、また自然環境にもやさしい配慮がなされる持続可能な取引のサイクルを作っていくことが重要です。フェアトレードとは直訳すると「公平・公正な貿易」。つまり、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」をいいます。
引用:特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパン
https://www.fairtrade-jp.org
日本でのフェアトレードの動きは、1974年に、洪水災害で困窮した農村の女性たちが作った手工業品を日本で販売したのが始まりとされています。
2000年以降になると、「フェアトレード」に積極的に取り組む企業や食品メーカーも増え、「フェアトレード」という言葉がようやく一般の人に知られるようになってきました。バナナやコーヒー、チョコレートなど「フェアトレード」のマークがついた商品を見た事がある方も多いのではないでしょうか。
しかしながらまだまだ普及率が高いとは言い切れません。「知らないから」という理由は勿論ですが、「フェアトレード」商品が普及しない一番の理由は、やはり値段が普通の商品より高いことにあります。
日本では特に食品に関しては値上げを許容できない風潮が根強くあります。この低価格志向は、日本国内における一次産業(農業・酪農畜産・林業・漁業など)でも大きな課題だと思います。生活者も小売業者も「品質」よりも「値段」を見て購入するため、いいものが売れない、安いものしか売れないという悪循環。生活者の声に応え「消費者利益」を優先し続けた結果、過剰な安さが蔓延し、売れている食材は見た目が綺麗な農薬まみれの…なんてことも?!
「国際フェアトレード基準」には以下のような基準があります。
生産者側にも、遵守すべき経済的基準や社会的基準、環境的基準が設けられています。
生産者が守るべきフェアトレード基準
経済:生産者は組合を作り、透明性のある民主的な活動を行う。安全な労働環境、人権の尊重、人種差別・児童労働・強制労働の禁止などILO条約(国際労働条約)を守る。
社会:商品代金とは別に支払われるプレミアム(奨励金)を民主的に運用し、組織と地域全体の社会・環境にとって持続可能な発展に取り組む。また付加価値の向上や品質管理への取組みなどを通して生活向上を目指す。
環境:農薬・薬品の使用規制、農薬・薬品を取り扱う生産者・労働者の健康・安全対策の強化、廃棄物の適正管理、リサイクルの促進、土壌・水源の保護、生物多様性の保全と向上、遺伝子組み換え作物の禁止 などの環境に関する基準を守る。
出典:特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパン
https://www.fairtrade-jp.org/about_fairtrade/intl_standard.php
これはフェアトレード商品の生産者だけでなく、日本を含む全ての国の生産者が守るべき生産基準だと感じました。特に環境においては私たちの健康にも関わる内容です。なぜこの商品がうまれたのか、なぜこの価格なのか、「その製造過程に魅力」を感じたら、「フェアトレード」マークを選択肢の一つに加えていただきたいなと思います。
そして「SDGsアクションプラン2020」においても「成長市場の創出・ 地域活性化・ 科学技術イノベーション」の項目で、農林水産業・食品産業についての取り組みが明記されました。一次産業の価値と適正価格の存立のために、日本の食文化を、私たちの食卓と健康を守るために、積極的に学び、出来ることから協力してみませんか?